スペイン、そして能登から

スペインと能登のことを主に書いています。

マドリード 治安

20世紀の終わり頃には、マドリードは非常に危険な街と言われていた。

特に日本人観光客は、そのパスポートを目当てに狙われていた。パスポートは偽造して、日本人と顔のよく似た国の方々が不法入国するために使用されていたとか・・・

 

この頃、空港からのバスが着くコロン広場の地下では、バスから降りる観光客目当てに、大量の首絞め強盗が発生したという。既にこのターミナルはなくなっている。空港からのバスもアルカラ門、シベーレス広場、パセオデル・プラドを通って、高速鉄道の発着するアトーチャ駅に着く。しかも24時間運航だ。5ユーロもするが。

空港からは地下鉄もある。今年から地下鉄運賃に空港入場料がなくなったので、地下鉄を使えば1.5ユーロで市内に行くことができる。但し、長旅の疲れで注意散漫になってスリや置き引きにあったりしないよう注意が必要だ。路線バスも空港バスと同じところに止まるので、これでアベニーダ・デ・アメリカまで行くことができる。Suicaのようなカードがあるので、これを購入すると便利。

 

1990年代終わりから2000年代初めは、治安についてスペイン在住の皆様が運営するいくつかのサイトで注意喚起されていて、大変参考になった。それを思うと、治安はよくなったものだ・・・

ソルにも、たくさんのヒターノの皆さんがいた。ちょっと怖かったものの、何かをされるわけでもなかった。

 

地球の歩き方」などによれば、スペインはバックパッカーが多いところで、飛行機も夜遅くに就く安い航空会社を選び、夜遅くや朝早くの暗い時間に移動する方が多かったことも原因らしい。領事館の過去一か月の邦人被害を見ると、なるほど、と思うこともある。また、裕福な方々は現金を大量に持ち歩くことがあったらしく、レイア・ソフィア芸術センターの中庭で70万円が強盗の被害にあうという事件があった。

ロエベやリヤドロなどの高級な品物が入った紙袋を持って歩いていて、ひったくられたりすることも多かったらしい。「地球の歩き方」を持っているのも日本人ということで、青い部分を削って持ちあるく人もいたり、いろいろなところで、中身が見える透明なバックやレジ袋を持ち歩くとよい、というアドバイスがあると、100均などで売っている透明なビニールバックを使用する方も。中身が見えると何が良いかと言えば、パスポートやお財布などは入っていません、というアピールらしいが、この透明なバックにお財布、カメラが入っていることを社会に公表しながら歩く方々も多くあり、せっかくのアドバイスの意味が理解されていないことが残念だった。

 

上智大学スペイン語講座でご一緒した方々の中にも、被害にあった方が何人かいた。

日本人の目印はウェストポーチだそうだ。これを切り取って持っていかれたという方がいた。ソルやグラン・ビアあたりのオスタルでは、外の扉を開けている間に複数の強盗に取り押さえられて被害にあうとか、あの頃はそんなニュースばかりだった。

不幸にも、亡くなった方もいる。今でも年配の方々には、マドリードと言えば、首絞め強盗を連想する方が多いと思う。

 

治安が良くなった理由の一つが、2000年代に入ってからのオリンピック誘致だろう。

あの頃から街がきれいになり、川沿いも開発され、セゴビア橋周辺もゴヤの時代のような風情だったものが、現在的なきれいな公園になった。

また、キャッシュレス化が進み、現金を持ち歩かなくなったこと、テロの危険性もあることから、警察組織がある程度機能してきたこともあるだろう。とにかく、外貨獲得には中国の皆様をはじめとする観光客に来てもらおうことが重要だと気が付いたらしい。

 

中国人の観光客が増加したことで、マドリードは大きく変わった。

今では中心部のホテルやバール、レストランでは英語はもちろん、中国語を話す従業員が増えている。中には中国人の従業員もいて、いきなり中国語で対応されて「我是日本人」というと、何も言わずに去っていく方もいる。プラサ・マジョールの観光案内でも、いきなり中国語で話しかけられたのには驚いた。あのフランスのシャルル・ド・ゴール空港でさえ、標記がフランス語と英語、中国語なのだから、このくらいは当然なのだろう・・・ プラド美術館にも中国人の係が常駐するようになった。

オリンピック誘致合戦の頃は、どこに行っても英語、英語で、英語を話さない観光客には意外と冷たかった。中には自分は英語が出来るから雇われたので、私に英語を使ってほしいというレストランの従業員もいた。そんなこともあり、いつの間にか宿泊も食事もセントロから外れていくようになった。

 

あのリーマン・ショックの時には、中心部から少し離れた橋の下などにホームレスが住んでいて、怖い思いをしたこともあるが、自分が慣れてきたせいか、治安上の問題はほぼなくなったと思う。置き引きなどはどこの国でもあることなので、これはスペインに限ったことではない。

 

振り返ると、デモの出発地を通りがかって、一緒にデモをすることになったり、アフリカ人の露天商の大移動に巻き込まれたり、スリがポケットに手を入れて来たので、手を握り返したり・・・何もないわけではない。でも、無事にすごしていることは、とてもありがたいことだ。