スペイン、そして能登から

スペインと能登のことを主に書いています。

石川県能登地方 不便なところ?

関東地方では、誰に聞いても「いいところですね」と言われる。

何を以てそう言われるのかは、よくわからないが、自然環境が良いところ、美味しいものがたくさんあるところ、だろうか。

 

テレビの旅番組でも、田舎の美しい風景だけが取り上げられるので、そう思うのも仕方がない。住むにはかなり過酷な面もある。

高校生の頃、冬の朝、バス停でバスを待っていると、いきなり波を被ってしまうことがあった。これではもう学校に行けない。次のバスは2時間後なので、遅刻になる。

小学生の頃は、朝は降っていなかった雪が、学校にいる間に降り出し、気が付けば積もっていて、海岸線を走る路線バスが止まることがあった。その時は山道を1時間ほどかけて歩いて帰ることになった。うさぎやキツネに遭遇したものだが、今では猪が出るので、一人で山道を歩くなど、とんでもないことらしい。

上下水道が完備された都会と違い、冬には山水を引いている水道が凍結、夏は水不足のため、川で洗濯した。汚水は海に直通で、生ごみを海に直接すてる場面もあった。はるか半世紀も前のことなので、今ではそんなことはしていないと思う。

海沿いなので、風も強く、TVのアンテナが違う方向を向いてしまい、TVが映らなくなることもあった。今はケーブルテレビなので、そんなことはないらしい。

全国的な問題でもある猪の出現も頻繁らしく、大好物のイモ類は全滅らしい。

 

決して便利ではなかった。でも、それを不便とは感じていなかった。その生活しか知らなかったからだ。

今では、かなり便利になったと思うが、それでもそんなに変わらないようにも思う。

交通の面から行けば、不便そのものになった。バスがない。朝と夕方の通学用のバス以外はほどんどない地域がある。どこの家にも車があるので、バスの利用客がいないためだ。車のないご高齢の方などはどうしているのだろう、と考えてしまう。

 

スペインに旅行に行き、人里離れた修道院などに行きたいと思い、バスを探すと同じ現象がある。朝、村から近くの大きな町に出るバスと夕方町から村に帰る一往復しかないことがほとんどだ。タクシーを利用するか、夕方行って一泊するか、どちらかになる。

その上、土日は運休する。日本では土日運休がない分、まだいい。

 

観光も車でないと、かなり大変なことになる。

昨年の秋、横浜から輪島市門前町にある阿岸本誓寺に行くご夫婦と新幹線でお会いした。何年か前のガイドブックを持っていて、そこには金沢から門前町への直通の急行バスのことが掲載されていた。ところが、このバスは既に配線となっている。奥様はどうしても本誓寺に行きたいとのことで、ご自分で調べて金沢から七尾線で七尾、七尾からのと鉄道で穴水、穴水から路線バスで門前、門前でバスを乗り換えて最寄りのバス停まで行くというルートを説明してくださった。気が遠くなるような話だ。しかも帰りはバスがないので、タクシーを呼ぶしかないということ。よくぞ、ここまで来てくださいました。すごいなぁ・・・と思った。

阿岸本誓寺といえば、おととしの「行く年くる年」でも放映された有名な浄土真宗のお寺。たまたま、マドリードでスペイン版「行く年くる年」的な番組を見ていたら、NHKの映像が映ったので、ちょっと嬉しかったことがある。

それなのに、金沢から来るのにこの大変さは何だろう!

観光バスのツアーでしか、来なくていいということ?

 

急行バスが配線になったことは、利用者が少ないのだらか仕方がない。でも、このご夫婦には申し訳ない気がした。

本誓寺を楽しんで帰ってくださっていることを祈る。

 

 日本中が便利になった中で、ここはずっとこの状況で、この先ますます不便になる。

何年か後にはなくなる市町村が話題になるが、ここはあと何年だろう?

 

聞くところによると、阿岸本誓寺の近くに移住して来た方があったらしいが、すぐに撤収されたとか・・・

便利だから住むのか、不便でも、ここが好きだから住むのか・・・

難しいところだ。